2時半まで飲んでおった・・・。
さすがに朝キツかったのでみんなを送り出したらまた寝たが、まぁ10時に起きても今日は休日だから時間はたくさんあるのだ。
だから昨日も悪びれずにあんなに飲んだのだが。
今日やる事は決めていた。
昨日はあまり休日を生かせなかったので、名誉挽回のインパクトがあるものだ。
戦車、と同じ音の「洗車」である。
先週あたりからダンナが洗車に出したいと言っていたのだが、それがどうよ、今日仕事から帰ってきたら車がピカピカなのだ。
俺の妻、最高!!となる訳である。
まぁやりたいからやるのだが、計算もある。
洗車は大変なのだ。
それをやっちゃうんだから、たいていの悪事は許される事だろう。
自宅での洗車など、年に1度あるかないかである。
いつも急に思い立つので道具があるか心配なのだが、なかった試しがない。
なぜなら滅多に洗車をしないから消耗しないのだ。
シャンプー、ワックス、ブラシ、スポンジ、タオル。
そしてセーム皮というフランスの由緒正しい川のような名前の皮製タオルも入っていたが、コチコチであった。
濡らせば生き返るのかもしれないが、何だかカッパのクゥみたいで嫌だなぁ。
蘇る牛の皮。
しかし捨てはしないので、また1年、バケツの中で過ごす事になるのだろう。
いい季節である。
私は濡れてもいいように短パンとTシャツになり、思い切りシャワーの水を出して洗っていった。
実は洗車は結構好きなのだ。
ただ、時間のある休日には全くやる気にならないので、なかなかチャンスがないだけである。
しかし年季が入っていたのはセーヌ皮だけではなかった。
一つだけ入っていた大きなスポンジは、ひっかかりがあるといとも簡単に崩れ、そこらじゅうにポロポロとスポンジ片が残されていった。
頑張れ、今日だけでいいんだ。
今日が終わったら、いいところに連れて行ってあげるよ・・・。
「わぁ!!大きい車!!」
向かいの1年生になったばかりの女の子が、新しい友達を連れてやってきた。
面白そうに洗車している姿をみんなで見ている。
「すごいなぁ。」
「タイヤに乗ってるよ。」
「どうやって乗ったのかなぁ。」
すげぇだろ。
酒飲んでもすげぇんだぞ。
「大きいなぁ。」
そんなに大きくはないが。
「乗りたいなぁ。」
ブブッ。
子供は嫌いじゃないが、こういうのは正直面倒である。
私はニコニコ笑顔をサービスしながらこのエンターテインメントを披露していたが、彼らの賛美には一切返事をしなかった。
「乗りたいなぁ。」と私に直接言われたら困るからである。
私は子供相手でもNOといえない日本人なのだ。
結局子供達はすぐに飽きて「犬、見たい人~~~!!」「は~~~い!!」と言って、奥にある家に走って行ってしまった。
犬以下の作業か、洗車は。
しかしその犬は室内飼いだったので、勝手に庭に回って覗き込むのである。
「見えないよー。」
「見たいよー。」
向かいの娘はブーイングをもらっている。
すると今度は「こっちこっち。ここのね、ベランダのところに時々猫がいるんだよ。」
斜め向かいの家である。
ここも室内飼いだが、ベランダには出しているので私も良く目にする。
しかしその時にはいなかった。
犬の件での失態をカバーしようと思ったようだが、いないものを見せても仕方ないのだ。
私は「ここにも猫がいるんだよ。」と言い出すんじゃないかと冷や汗が出た。
我が家にも3匹いる事は、良くご存知である。
「見たい~~~!!」となったらどうする?
子供にすら恥ずかしくて見せられない部屋である。
庭から回ってもらうか。
いや違う、そうじゃない。
面倒臭いのだ、もの凄く。
しかし彼女らは私のところには来なかった。
来なけりゃ来ないで「うちのエル、見たくなかったのか・・・。」とちょっとガッカリである。
洗車を終えて買い物に行き、帰ってくると、駐車場の前で犬の家の子供がキャッチボールをしていた。
彼らふたりを線で結んだ先には、我が家のピカピカに磨かれた愛車が停まっている。
お前ら・・・、投球の技術は大丈夫なのか?
実は以前に「ゴツン」、「やべえ」という声を聞いたことがある。
そしてそのゴツンはすぐにまた聞く事ができた。
鍵を開けていたらゴツンと言う音がしてボールが転がってきたのだ。
おっしゃ、取りに来い。
根性あるとこ、見せてみろ。
根性なしである。
では私のターンだ。
それは黄色いテニスボールだったが、だからと言って黙認していたら彼らはいつまでもここでキャッチボールをするだろう。
良かねぇんだよ、それは。
やるなら隣の車の前でやれッ。
とは言えない日本人ぽ子は、「ここでやると車があるから危ないよ。」とだけ言ってボールを返してやった。
言い終わってから「危ない」の主語はどっちなんだろうかと考えたが、車であった。変な日本語である。
彼らは何だと思っただろうか。
家に入ってから先程のシーンを軽くリフレインしたが、大変なことに気がついた。
彼らはこんな会話をしていたのだ。
「なかなか打てないなぁ。」
そして二人のうちの一人は、バットを持っていたのである。
そしてその一人はうちの車の前に立っていた。
彼らは洗いたての我が家の車を、キャッチャーに選んでくれたのだ。
光栄だ。
次があったらアメリカ人のようにたしなめたいと思う。
ファッキンチルドレンよ。