何も失くさず、大声も出さず、暴れず、泣かず、無事に家に帰ってきた。
昨日の事である。
私のあまりの酒グセの悪さに外で飲ませたがらないダンナだが、私だって行きたい時もあれば行かなくてはならない時もある。
「ちゃんと帰って来て大人しく寝る」という実績がないので私の言い分に説得力はないし、ダンナはなかなかウンとは言ってくれない。
結局強引に出掛けるのだが、「もし問題を起こさずに夜を過ごせたら、焼き鳥屋で飲む権利をもらう」というエサを仕掛けてもらってから出向いたのだった。
焼き鳥が食べたかったのだ。
本当に毎回私だって、ちゃんと帰って大人しく寝るつもりで出掛けているのだが、ある線を越えると酒に飲まれてしまい、約束や理性や自制心などどうでも良くなってしまう。
ただの酒を飲む塊と化した私は歩く、買う、鍵を開けるというような運動能力すらなくなり、つまらん事でキレる爆弾となる。
どうしたら焼き鳥を食・・・、人に迷惑をかけないように飲めるのだろうか。
たかが二千円といえ、金を払って酒を飲まずに愛想笑いをして過ごすのは御免である。
職場の奥様方は優等生ばかりなので、全く話が合わない。
なので飲み会は、割に合わないホステスのバイトみたいなものである。
子供の話、受験、塾、ご主人(ダンナではない)、PTA、韓国ドラマ。
笑顔、相槌、感嘆、同調。
これをシラフでやるなんて、無理な話である。
しかし、飲んだら飲まれてしまう。
もうセーブするより他はないのだが、奥様方の接待をしながら酒をセーブする事ができるだろうか?
できなくはない。
実は前回会社の公式の飲み会に行った時には、ビールを少し飲んだだけで2次会にも行かずに帰って来た。
だから今回もその線を狙うのだが、どこまでが飲める酒の量の限界なのかわからないのだ。
今回もギャンブルには違いない。
ところが思いのほか盛り上がり、楽しくなってしまった。
そうなるとどうしても酒のペースが上がる。
普段私は家で好きなだけ飲んでいるが、この頃は悪酔いすることは滅多になくなってきた。
時間にして6時間ぐらいなら大丈夫だと自信がある。
場所が変わっただけじゃないか。
たかが飲み会2時間。
酒量に対して甘くなってくるのは危険信号だが、その時はもちろんそんな事には気付かない。
なので飲み物をビールに絞り、ペースにだけ気をつけて量はあまり考えない事にした。
やがて課長が隣に座る。
彼はあっちゅー間に持っていたグラスを空にすると、ウィスキーでも飲みますか、と言った。
酒飲みは酒飲みが好きである。
奥様方はほとんど飲まないのでそういう部分で私のテンションも下がるのだが、思いがけず戦場で戦友に会ったような気持ちになり、「じゃあダブルで。」と言っていた。
次には「このダブルは薄い。」「じゃあロックで。」となる。
「酒、という感じの味ですね。」
課長は満足そうに笑うともう私は酒の量なんでどうでも良くなってしまった。
ウィスキーなんて何年ぶりだろう。懐かしい味だ。
ロックなど飲んだことはなかったが、酒という味である。
課長の話は楽しく、私はどんどんいけない道に向かって歩き出していた。
しかし最終的には課長は消え、上司アンガはグデングデン。
2次会の誘惑はなかったので、家に帰るしかなかったのだ。
私は飲み足りない部分を家のワインで埋め、いつもの夜のようにガンダム無双をやって、ソファで寝てしまった。
まぁいいか。
そこそこ楽しんだしちゃんと帰ってきたし。
これで次の飲み会への道が拓けた事だろう。
クリア~~~♪♪焼き鳥♪