人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

分岐点

製造業、3月末までに、派遣・請負40万人失業

今日の新聞の1面の見出しである。

一応ぽ子の勤めている会社も製造になるのだろうと思うが、年末あたりから仕事が減り、勤務時間も減らされている状態である。

それによって収入は減ったが、今すぐ家計に響くということはないので先行きを見守っている。

しかしこの状態が長く続くとなると、私も身の振り方を考えなくてはならなくなるだろう。

実はぽ子は、ヘルパー2級の資格を持っている。

前の仕事を辞めた時に、積み立てていたお金で資格を取ったのだ。

しかしそこで学んで知った事は、私には向かないと言う事であった。

私は、目の前にドンと積まれた仕事を「オラ、これを一刻も早く片付けろやこのボケ!!」という感じの生産的、消費的で効率を重視した仕事が好きなのだ。

まさか年寄りの世話を数でこなしていく訳にはいかないだろう。

私は大いに後悔した。

講習は7万であった。

月にほんの千円ずつ、会社の交遊費として強制的に積み立てをさせられていたのだが、私は一切会社の行事に出なかったので、辞める時にそれだけ貯まっていたのだ。

旅行にでも行けばよかった。かなり豪遊できたはずだ。

服を買っても良かったし、飲んでバカ騒ぎして使い切っても良かったのだ、結局何のたしにもならなかったのだから。

ドブに捨てたのと同様である。

いや、講習に通うのに交通費がかかっているから、むしろマイナスである。

何かを学んで「無駄」という事はあり得ないのだろうが、私には無駄であった。

あそこで学んだ知識を今7万で誰かに丸ごと差し上げてもいい。

しかし腹が立つのは、差し上げようにもほとんど学んだ事を覚えていない事だ。

車の運転でいえばペーパードライバーである。

ところがこの資格を持っていることを証明する小さなカードが今、輝きを持ち始めたのだ。

このままでは今の仕事だってどうなるかわからない、しかし娘ぶー子は大学進学を控えており、金がなきゃ困るのだ。

私は求人広告を見た。

驚いた事に、以前とは随分様子が変わっていた。

私などが働けるような場所の求人は激減していたのである。

しかしだ。

もっと驚いたのは、介護職の求人の多さである。

今の職場は非常に働きやすく、仲良くなった人たちとの付き合いも楽しいのでできれば離れたくない。

でも私は考えた。

これまで私は楽な方へ逃げ、新しい事に挑戦などした事がなかった。

ぽ子40歳、キャリアを積む最後のチャンスなんじゃないか?

私は「人生に無駄な事などない」と思っているが、どうもあの資格だけは無駄だったのが疑問であった。

もしかして、無駄にならない運命だったのか??

このまま生ぬるく生きていくか、ここらで頑張ってひと花咲かすか、今、分岐点に立っている気がする。