人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

その扉に向かって

昨日のその後である。

パソコンを切ると私は片付けのためにガラステーブルに向かったが、とにかく眠いのだ、猛烈に。

で、その誘惑に勝ったかと言うと勝つはずはなく、私はガラステーブルの前にあるソファに座って目を閉じた。

まぁいいよ、部屋なんて基本、汚いんだから。

エルがたたみ掛けるように私の脇に入って寝る準備を始めた。

「流れに逆らってはいけない」というのは、私が経験からこの40年で学んだ事である。

夜はなかなか寝付けずに苦労しているが、この時私は眠りの扉に向かって爆走していた。

しかも扉は大きく開いて私を呼んでいる。

あとは両手を広げてそこへ飛び込むだけ、というその時、膝に乗せてあった携帯がブルルと震えた。

ダンナからのメールであった。

「今から帰るよ~~!!」という明るいメールを皮切りに、合計8通のメールが2、3分おきに立て続けに来た。

なんでこの日に限って・・・。

傾向として、女はメールが好きで男は苦手なものである。

私もダンナもその枠の中にいると思うが、メール好きな私に対してメールが苦手なダンナが、珍しくたくさんメールをよこしているのだ。むげにはできない。

しばらく頑張ったが、私がセットしたアラームは残す時間を40分ほどとしていた。

今見てみると、私の最後の返信3通は全て簡潔な絵文字のみになっていて、「眠い」ということを伝えるのさえ、寝ている顔の絵文字を3つ送っただけである。

最後は猫が土下座しているメールで終わっている。

とにかくこれで再び寝る準備に入る事ができたのだ。

すぐに眠りの扉に向かって走り出す。

メール中もそうだったが、二度寝昼寝などのいけない眠りの場合、速やかに目的に向かう事ができるのから不思議だ。

しかし一連のメール悲劇のせいでエルも落ち着きをなくし、脇に挟まったまま猛烈な毛づくろいを始めていた。

まるでスイッチでも入ったみたいに「そうれっ、そうれっ」という具合にせっせせっせと体中を舐めている。

う~、こういうのは寝入りばなには響くものである。

眠りの扉の手前で中に飛び込めずにモジモジしていたら、突然エルは私の脇から抜けて走り出し、「アオ~~ン、アオ~~~ン」と吠え出した。

発情期特有の遠吠えである。

うううううるさい・・・・・。

しばらく我慢していたら、今度は私のお腹の上を横切った。

私は目を閉じていたのだ。

突然腹の上を通り抜けられ、たまげて目を開ける。

もうこれ以上ウロウロされたり鳴かれたりしたら、眠りに集中できない。

せっかく扉が開いてるのに、そうはいくか。

私は小さなエルをフン捕まえて、クルッと丸めて脇の下に押し込んだ。

抵抗するだろうと思っていたのが、そのまま大人しくなった。

よし、扉よ、今行く。

私は今度こそとそちらに向かったが、果たして扉は閉まっていた。

すっかり目が覚めてしまったのである。

時間を見るとあと少しでアラームが鳴りそうである。

観念して起きる事にしたが、今度はエルである。

丸めて挟んだだけでグッスリ寝ている。羨ましい。

スヤスヤと寝息が聞こえそうなぐらいに、ぐっすり寝ている。

あどけない寝顔。

これを起こすなんて鬼である。当然エルの鬼になんてなりたくない。

こんな時は他の誰かに鬼になってもらうのだが、あいにく部屋にいるのは猫と自分だけだ。

なので私は携帯に入っている音楽を流してみる事にした。

猫達は携帯の着うたに敏感で、寝ていても驚いてすぐに目を覚ますのだ。

データフォルダを開いても、タイトルが入ってないので曲名が分からない。

私は携帯を全く使いこなせていないので、音楽は娘ぶー子が気まぐれにくれたものがあるのみで、しかもそれももらいっぱなしで放置であった。

それらの中から適当に選んで決定すると、流れ出したのは「サラリーマンNEO」の曲であった。

突然の音に驚いてエルは体を起こした。

思う壺だが、こんな曲でたたき起こしてしまい、かわいそうである。

こうして結局眠れなかったのだ。

次ぎに眠りの扉が開くのはいつのことだろう。