勉強しないで受かる大学などないだろう。
あるとしたら推薦だろうが、残念ながら娘ぶー子は遅刻・欠席・早退が多かったため、推薦は無理であった。
という事は、勉強をして大学に入らなくてはならないが、やっと始めたのは先月半ばであった。
しかも中1から遡っての学習である。
間に合うのか?
焦る私とは反対に、のんびりとマイペースで勉強しているぶー子。
相変わらず良く寝る、出掛けてくる、確かに勉強はするようになったが、生活態度はあまり変わっていない。
しかし、指導なしで勉強することは結構難しいのではと気付いたのだ。
ひたすら教科書をたどるのみ。
このままでいいのかも分からず、ただただ毎日教科書と向かい合う。
達成感などない、果てしない作業である。
これは、指導者が必要だ。
具体的には塾である。
高校受験の時も、このように大幅に周りから出遅れて塾に入った。
「もっと早く来て欲しかった。」と先生には言われた。
何度でも繰り返すぽ子親子である。
私はその日たまたま入って来た広告の塾に電話をしてみた。
たまたま入って来た広告だが、名前は良く聞いている。
職場の仲間のご子息が通っていた事があったからだ。
「もう残された時間が少ないので」と、面接を急かされた。
勉強に行き詰っていたぶー子も、積極的についてきた。
残り数ヶ月だ。
高くつくだろうが、出遅れているぶー子には個別で授業を受けさせるつもりでいた。
週2回だと、月に5万4千円である。
その他に入会費、2万1千円。
しかし面接に行くと、向こうは「週4」を提案してきた。
10万を超える。
これだけ書くとまるで悪徳商法のようだが、実はぽ子もぶー子も感動して帰って来た。
やはり彼らはプロである。
私などが思いもつかないような計画を立て、驚かせた。
浪人も覚悟していたが、逆に「そこまで覚悟できてるのなら」と、本来なら断るケースを引き受けてくれたのだ。
なんだか受かりそうな気すらしてきた。
そして、面接にあたったのは、職場の奥様の言っていた「カリスマ講師」であった。
話に聞いていた通り、ぶー子の中間テストの回答を見ただけでぶー子の得意不得意悪い癖を言い当て、その上話術であっという間にぶー子をやる気にさせてしまった。
私までもポンと10万を払う気持ちになったのだ。
この面接では、非常に突っ込んだ質問をたくさんされた。
主に勉強についてだったが、
「これまで1日にどれぐらい勉強してたのかな?」
「・・・気が向いたら・・・っていうか、ほとんどした事ないです。」
「中間試験とかの時は?」
「ほとんど一夜漬けです。」
「具体的には?」
「前の晩かその日の朝、1時間ぐらいでぶぁ~~っと暗記します。」
「じゃあ毎日どんな感じに過ごしてるのかな?」
「だいたい9時ごろまで遊んで、帰ったらご飯食べてお風呂入って寝ます。」
「9時ごろまで何してるの?」
「ん~~、カラオケ行ったりファミレスで喋ってたり。」
「入試の勉強はしてないの?」
「あ、やってます!!」
「どんな感じ?」
「中1から教科書やってます。」
「時間的には?」
「えっと、学校から帰ったらちょっと休んで、それからやってます。」
「っていうと相当時間あるけど、う~~んと、6時間ぐらいとか?」
「あれ?おかしいなぁ、そんなにやってないです。」
「じゃあ例えば今日は?」
「家に帰ったら1時間ぐらい寝てからやりました。」
「・・・っていうと3時間ぐらいかな?」
「・・・あれ?そんなにやってない・・・なぁ。」
「じゃあ今日の勉強の内訳は?どんなことやった?」
「教科書とDS・・・。」
「DSって言うのは『えいご漬け』とか?」
「ハイ。」
「じゃあ教科書とDSの配分は、どんな感じだった?」
「えっと、教科書の方は一時間ぐらい??」
「じゃ、あとはDS・・・。」
「ハイ。」
もう、私は可笑しいやら恥ずかしいやらで、笑うしかなかった。
この面接で、「これは大変な子を引き受けてしまった」と思った事だろう。
しかしだ、カリスマはぶー子のテストを見て、「これ、勉強してからやった?」と聞いてきたので、ぶー子はバカ正直に「全然やってません。」と答えたのだが、
「全く勉強しないでこの点数は凄い」と褒めて下さったので驚いた。
評価がCとDばかりで見せるのをしぶっていた小論文も、「なんで?Cって平均じゃない?悪くないんだよ、平均。普通なんだよこれで。」と言ってくれた。
ぶー子もつられて「そうっすよね、早トチリでした、アハハ。」と笑い出した。
週明けから塾通いになるだろうが、私もぶー子も楽しみにしている。
入試ですら楽しみになってきた。
頑張れ、ぶー子よ。