人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

カリスマに託す

勉強しないで受かる大学などないだろう。

あるとしたら推薦だろうが、残念ながら娘ぶー子は遅刻・欠席・早退が多かったため、推薦は無理であった。

という事は、勉強をして大学に入らなくてはならないが、やっと始めたのは先月半ばであった。

しかも中1から遡っての学習である。

間に合うのか?

焦る私とは反対に、のんびりとマイペースで勉強しているぶー子。

相変わらず良く寝る、出掛けてくる、確かに勉強はするようになったが、生活態度はあまり変わっていない。

しかし、指導なしで勉強することは結構難しいのではと気付いたのだ。

ひたすら教科書をたどるのみ。

このままでいいのかも分からず、ただただ毎日教科書と向かい合う。

達成感などない、果てしない作業である。

これは、指導者が必要だ。

具体的には塾である。

高校受験の時も、このように大幅に周りから出遅れて塾に入った。

「もっと早く来て欲しかった。」と先生には言われた。

何度でも繰り返すぽ子親子である。

私はその日たまたま入って来た広告の塾に電話をしてみた。

たまたま入って来た広告だが、名前は良く聞いている。

職場の仲間のご子息が通っていた事があったからだ。

「もう残された時間が少ないので」と、面接を急かされた。

勉強に行き詰っていたぶー子も、積極的についてきた。

残り数ヶ月だ。

高くつくだろうが、出遅れているぶー子には個別で授業を受けさせるつもりでいた。

週2回だと、月に5万4千円である。

その他に入会費、2万1千円。

しかし面接に行くと、向こうは「週4」を提案してきた。

10万を超える。

これだけ書くとまるで悪徳商法のようだが、実はぽ子もぶー子も感動して帰って来た。

やはり彼らはプロである。

私などが思いもつかないような計画を立て、驚かせた。

浪人も覚悟していたが、逆に「そこまで覚悟できてるのなら」と、本来なら断るケースを引き受けてくれたのだ。

なんだか受かりそうな気すらしてきた。

そして、面接にあたったのは、職場の奥様の言っていた「カリスマ講師」であった。

話に聞いていた通り、ぶー子の中間テストの回答を見ただけでぶー子の得意不得意悪い癖を言い当て、その上話術であっという間にぶー子をやる気にさせてしまった。

私までもポンと10万を払う気持ちになったのだ。

この面接では、非常に突っ込んだ質問をたくさんされた。

主に勉強についてだったが、

「これまで1日にどれぐらい勉強してたのかな?」

「・・・気が向いたら・・・っていうか、ほとんどした事ないです。」

「中間試験とかの時は?」

「ほとんど一夜漬けです。」

「具体的には?」

「前の晩かその日の朝、1時間ぐらいでぶぁ~~っと暗記します。」

「じゃあ毎日どんな感じに過ごしてるのかな?」

「だいたい9時ごろまで遊んで、帰ったらご飯食べてお風呂入って寝ます。」

「9時ごろまで何してるの?」

「ん~~、カラオケ行ったりファミレスで喋ってたり。」

「入試の勉強はしてないの?」

「あ、やってます!!」

「どんな感じ?」

「中1から教科書やってます。」

「時間的には?」

「えっと、学校から帰ったらちょっと休んで、それからやってます。」

「っていうと相当時間あるけど、う~~んと、6時間ぐらいとか?」

「あれ?おかしいなぁ、そんなにやってないです。」

「じゃあ例えば今日は?」

「家に帰ったら1時間ぐらい寝てからやりました。」

「・・・っていうと3時間ぐらいかな?」

「・・・あれ?そんなにやってない・・・なぁ。」

「じゃあ今日の勉強の内訳は?どんなことやった?」

「教科書とDS・・・。」

「DSって言うのは『えいご漬け』とか?」

「ハイ。」

「じゃあ教科書とDSの配分は、どんな感じだった?」

「えっと、教科書の方は一時間ぐらい??」

「じゃ、あとはDS・・・。」

「ハイ。」

もう、私は可笑しいやら恥ずかしいやらで、笑うしかなかった。

この面接で、「これは大変な子を引き受けてしまった」と思った事だろう。

しかしだ、カリスマはぶー子のテストを見て、「これ、勉強してからやった?」と聞いてきたので、ぶー子はバカ正直に「全然やってません。」と答えたのだが、

「全く勉強しないでこの点数は凄い」と褒めて下さったので驚いた。

評価がCとDばかりで見せるのをしぶっていた小論文も、「なんで?Cって平均じゃない?悪くないんだよ、平均。普通なんだよこれで。」と言ってくれた。

ぶー子もつられて「そうっすよね、早トチリでした、アハハ。」と笑い出した。

週明けから塾通いになるだろうが、私もぶー子も楽しみにしている。

入試ですら楽しみになってきた。

頑張れ、ぶー子よ。