原因は何となくわかる。
その前の晩に、ダンナと気まずいまま布団に入ってしまったからだろう。
些細な事だ。
ちょっと嫌な気持ちになったのだが、わざわざ言うほどの事でもない。
結果、何となくぎくしゃくしたままお互いの布団に向かう事になったのだが。
翌日、私は集合場所の会場に着くのがかなり遅くなってしまった。
息を切らせてその大きなホールに駆け込むと、まずダンナの姿を探した。
広いエントランスにその姿はなく、私は廊下を奥へ進んでいく。
果たしてダンナは、奥の小さな部屋の入り口にいたのだが、私は思わずその手前で足を止めた。
ダンナが大きな声で何やら文句を言っていたからだ。
ダンナは穏やかな人で、このように激高する事は全くないと言っていい。
何かに腹を立てることはあっても、「もう嫌になっちゃうよ!」ぐらいなもので、しかもすぐに治まってしまう。
なぜこんなに精神が安定しているのか、私は妬ましいと言った事がある程だが、そんな彼が大きな声で何かに怒っているのだ。
「言いたい事があればハッキリ言えばいいのによ!!」
こんな激しい言葉使いも珍しかったが、それよりも驚いたのは、怒りの原因が私だと分かったからだ。
「だいたい短気なんだよッ。つまんない事でいちいち怒り出すし、文句があるなら言やぁいいのに!!」
あぁ、前の晩のことか・・・。
ダンナこそ何も言わなかった。
文句があるなら言えば良かったのに。
しかしそれは怒りではなく、失望であった。
やっぱり不満だったんだ。
やっぱり私に不満だったんだ。
そこでもう一度前を良く見ると、驚いたことにダンナがグチっている相手は、若い女性であった。
ダンナが、若い女性に、私の悪口を言っている。
何となくただならぬものを感じたが、そこでこちらを向いていたその女性と目が合ってしまった。
すると彼女は、不敵な笑みを浮かべたのだ。
その彼女の笑みで、ダンナは後ろにいた私に気付き、振り向いた。
ダンナはしっかり私を認めたが、うろたえる訳でもなく、つまらないものを見つけてしまったと言うようなウンザリした顔をしただけだった。
私は悟った。
終わる。
ひどい夢である。
ちなみにダンナが再婚する、と言った相手の名は「山田まりや」と言った。
私はこの山田まりやの憎たらしい笑みに腹が立って、なかなか起きる事が出来なかった。
そんなんで、長めの二度寝であった。今日。