人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

親の心、子知らず

好きで一緒に暮らしているのだから、基本的に親バカである。

皆、ひとつは買った事があるんじゃないだろうか、「猫のおもちゃ」。

別にわざわざおもちゃなんて買わなくても、猫はその辺の物で勝手に遊んでくれる。

丸めたレシートだとか、ペットボトルのフタだとか。

しかし親バカは、与えたいのだ。

まんまと遊び出す姿が見たいのだ。

私は過去に何度もおもちゃを買ってきた。

人間の子供と違うのだ。これでダメなヤツに育つなどと言うことはないだろう。

しかし、大抵は飽きて放置される。

そこは人間と同じである。

今部屋に放置されているものは、紙風船。

膨らましてポンポンと浮かせてやると「なになに?」と寄っては来るが、一度床に落ちてしまうと後は猫自身の手動である。

おもちゃとしてはちょっとサイズが大きいので、コロコロという訳にはいかない。

チョチョッと手で触り、しばらく凝視。

動かない事を見てとると、もう他に気がそれてしまう。

根気良くこちらで動かしてやっても、今度は空気が抜けてそのたびに膨らまさなくてはならない。

始めのうちはじゃれる猫見たさに一生懸命相手をしていたが、今は床にぐったりしている。

いつからだろうか?

「これは猫のおもちゃである。こうしておけばまた遊び出すかもしれない。」と思うと片付ける気にならず、長い事このままである。

ゴム風船も買った。

ピューと音を出しながら飛んでいくヤツを買ったのだ。

猫のおもちゃとして人気を博するには「動き」「音」「形」、この3つが優れている事だと思っている。

この全てを満たしているでないか。

袋から出して口に含むと、猫達は興味しんしんに寄って来た。

ところが、膨らますと同時に「スウ~」という音がした。

エルはそれだけでビビッて逃げた。

しかし気になるようで、遠くから目を丸くして見ている。

大きく膨らました風船を手から離すと、ピュ~~!!と言ってそいつは暴れ出した。

ラとミは「なにッ!!」と目で追っていたが、エルはよほど怖かったのか、ブルブル震え出してしまった。

震えているエルもかわいいが、このおもちゃは封印だ。

一緒に100均で買った、「ツルツルした壁に投げつけると、貼りついてゆっくり転げ落ちるおもちゃ」というのもあった。

小さくブサイクな、何だかわからない動物である。

頭と下半身がスライムのようなベトッとした素材でできていて、胴体部分はコイル状になっている。

トイ・ストーリーに出てきた犬のようなヤツだ。5cmほどの小さいものだが。

これも袋から出すと「なになに?」と寄って来たが、窓に向かって投げつけると、ガツンとぶつかってはね返り、床に落ちた。

猫は走って行ってニオイを嗅いで終わりであった。

その後も何度もやってみたが、すぐに胴体から真っ二つに分かれてしまった。

詐欺である。

100円だから言わないだけで、そこにつけ込んだ詐欺である。

くそ、胴体の分かれたブサイクなおもちゃを捨てる気持ちにもなってくれ。

哀れである。

10cmほどの幅の筒に、ネズミと羽が入っているおもちゃも買った。

これは100円では買えないおもちゃだ。

つまり我が家では「高級品」という肩書きを持つ。

これは筒だから力が加われば転がるのだが、その時にピュウピュウと音が鳴るのだ。

そこが気に入って私が強くねだったのだ。

ダンナは「こんなもの」というような顔をしたが、私には自信があったのだ。

「動き」。「音」。「形」。

全く誰にも相手にされなかった。

先のおもちゃのように、壊れでもしてくれれば捨てる気にもなるのだが、いつまで経っても新品のままだ。

そういえば最近見ないが、どこにいったのだろう?

あれも床に転がっていたはずだが。

結局かれらが一番喜ぶのは、猫じゃらしである。

エルは手でも喜ぶが、つまり人力で心をこめて相手をしないとダメなのだ。

しかし、それでもまた買ってしまうのだ。

「猫のおもちゃ」、それは「猫と遊びたい人間のおもちゃ」である。