人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

いまだ名無し

まだ子猫に名前がついていない。

私やダンナが考えても娘ぶー子がダメ出しするのだ。

かく言うぶー子が考える名前は「とんちゃん」「ぽろんちゃん」とその場の思いつきや、

目の前にあるスプレー缶の、横書きに書いてある名前を縦に読んだりと

まじめに考えているのかが疑わしい。

一度、PCに向かい「真剣に考える」と言い出したことがあった。

「イタリア語は美しいのだ。」

と訳のわからないことを言い、翻訳サイトで色々訳し始めた。

5つほど候補を出してきたが、どうよ?

誰がこれ、読むんだよ。

英語すらまともに読めないぶー子は堂々とローマ字読みしていたが

名付けて半年も経った頃に読み方が間違えていたなんて、取り返しがつかないじゃないか。

しかもぶー子が考え出した名前は単語だけでなく文章になっていたりして、やたら長いものもある。

私はイタリア語などサッパリわからないが、辛うじて読めた単語が1つだけあった。

「アモーレ・・・。」

猫にアモーレとか呼べるかよ!人に聞かれたらどうするんだ。

それでもイタリア語にこだわるぶー子。

「なんでイタリア語なのよ?」

「イタリア語ってのは世界でも美しいとされて・・・。」

・・・それはフランス語では。

ぶー子はアヒャヒャと笑いながらフランス語翻訳に切り替える。

もうアンタはいい・・・。

もうみんなこのハムスターほどの子猫にメロメロだ。

私が抱くと「ちょっと力が強いよー・・・。」

ダンナがミルクをやると「気をつけてよー・・・。」

歩かせてみると「踏んづけないでよー・・・。」

こんだけかわいがってるんだから踏んづけたりする訳などないのだ。

それでも仮に1億分の1の可能性の事故だとしても防ぎたいのだ。

ところがちょっと心配なところが出てきた。

まだ開かない目が片目赤く腫れてきたのだ。

まだこんなに小さいので顔のバランスがアンバランスで

やたら額と眼球がでかくはある。

そこがまたかわいいんだけど、かわいいかわいいと言いながら時々心の中で

「ホントかよ、良く見ると宇宙人そっくりじゃねーか。」と思ったりもする。

ウチら親バカ以外の人が見たら宇宙人なのか?

そんなんでもともと目玉は大きそうなのだけど、それにしてもどうも片目が一回り大きい。

それに気付いた途端、いてもたってもいられなくなった。

「何かの悪い菌に冒されてて、これが全身に回ったら・・・。」

日ごろから私のマイナス思考にウンザリしているぶー子は

「どっちの目も変わらないっっ!!」と怒ったが、私は気が気でない。

次の日また病院へ行く。

もう常連だ。

待合室にはすでに数人来ていた。

ここも考えようによっちゃ、無料動物園じゃないか。

みんな犬バカ猫バカだから、解説付きのふれあい広場だ。

ところがこれまではいつも泣きはらした顔で暗~く座っていたので、誰も声をかけてくれなかった。

今日はどうだい、フフン、みんな見るがいい、私の超ちっちゃい子猫ちゃんを!!

私はわざわざ両隣がいるところに座り、「話しかけてくれないかなぁ~。」と待っていた。

ダメならこっちから攻撃だ。どうせみんな見せたいのだ。

「・・・その中に入ってるの?」

私の小さなバッグを見て、隣のおばさんが話しかけてきた。かかったぞ!!

「はぁ。まだ生まれたばっかりで・・・。」頼まれもしないのに中を見せる。

「あらーーー!!小さい!!まぁー!!」キュー、気持ちいい!!

「ええっ?子猫ちゃん入ってるの?」逆隣が声を掛けてきた。最高。

あぁ、やっと待合室デビューを果たしたぞ。

子猫の目は炎症を起こしていて、膿んでるかもしれないとのこと。

「目をふやかして、開くようだったら開けてみます。」

ええっ・・・!!無理矢理開けるの!?

「開くようだったら」と言われたにも関わらず、私には「無理矢理」になってしまう。

「そ、そんな事して大丈夫なんですかっ。」大丈夫じゃない事、医者がするか。

「このままにしておくのもあまり良くないし・・・。」

うわ~~~ん、どっちもヤダけどしょうがない、ふえ~~ん!!

「やはりまだ開きませんでした・・・。」

ええっ!?じゃあこのままになっちゃうの??

目を開けるのもこのままもいやぁー!

先生は困ってしまって「小さいから無理できないんですよ。」と言う。

そうだろうよ、私も我ながら困った奴だ。

結局、散々心配だのかわいそうだの言って帰ってきた。

最悪の場合、失明するらしい。

そりゃもちろん、両目きちんと見えてくれた方がいいけど、

死にかかっていたのだ。

もう命があればいい。

私が心配しているのは、そんな事があるのかどうかわからないけど

目を冒している悪玉コレステロールが全身に回ることなのだ。

今のところ元気だ。

元気だけど相変わらず心配で心配でしょうがない。

やっぱり宇宙人?